夏は青。秋は黄金。冬は白。春は茶色。
夏が終わり、季節が秋めいてきた。吹く風が冷たくなり、心地が良い。
そんな新しい季節の訪れをを喜ぶとともに、夏の終わりを少し名残惜しく思う。
四季折々、どの季節にも心が躍る景色が現れる。それを五感で味わう瞬間こそ、季節の醍醐味だ。
季節を一つの色に例えるなら、夏は青、秋は黄金、冬は白、春は茶色。それぞれの季節がくれる贈り物を、色をベースにみていこう。
夏は青。
厚い入道雲が湧き出るような、深い青色の空が広がったら夏の始まりを感じる。
青空の下の新緑がコントラストで美しい。
日差しが照り付けるのに外へ出ていきたくなるのは、青空が私を誘うから。
キラキラひかりを反射して、どこまでも続く海の青。近くの海は透き通るような水色で、遠くの海は底の見えない濃い青。
そのまた向こうの果ての方は、海の青と空の青が出会う場所。果ての空は少し白んで、海の青を抱いている。
空と海を分ける水平線は確かにあるのに、2つの青には調和した一体感。
波の音に耳を傾けながら、昼の青から赤い夕焼けの空へ変わっていくのを眺めるのもいい。
スーパーで見つけたラムネは、子供のころを思い出す小さな青。カラカラ、ころころ中のビー玉が欲しくて飲んだ夏の青。
秋は黄金。
甘い、金木犀が香ってきたら秋の始まり。
オレンジ色の小さな花が香るのはとても短い間だけ。短い花期のはかなさは、秋という季節を象徴しているかのよう。
だんだん木々の葉が黄色く色づいて、落ち葉が地面をおおい始める。
紅や黄や茶色くなった並木に秋の光が差し込んで、あたり一面が美しい黄金色で満たされる。
夕方、薄青空に細く広がる雲の向こうの太陽が空を黄金に染めるのと同じ色。
一時の黄金は直ぐに枯れ色に変わる。冷たい風が肌をさらって、どこか寂しさを感じる。その雰囲気さえ秋の贈りもの。
冬は白。
朝、外は一面に広がる雪の白。まだ、誰も歩いていないきれいな白に足跡をつける。ぎゅっとなる雪。
1番乗りだと思ったらすでに先客の小さな足跡。かわいい小鳥のお散歩の跡。
除雪して作った道には、雪がまたはらはらと舞い積もる。
冷たい空気にさらされて、ジンジンする手と赤くなった耳。はいた息は白くて温い。
おととい作った雪だるまは少し溶けて一回り小さくなっている。
白い空から降る白い雪。木々も地面も建物も、街全体が白く染まってどこまでも広がる白い世界。冬だけに見れる美しい景色。
春は茶色。
春は茶色。大地の色。たくさんの草木花が芽吹く、その土台となる色。たくさんの命を支える生命の色。
雪が溶けて地面の茶色が見え始めたら、もうすぐ春がやってくる。
小さな新芽は大地に強く根を張って、春の強風にも負けずにぐんぐん育つ。小さな蕾は気づけば花開いて、色鮮やかに咲き誇る。
ぽかぽか暖かな日差しを感じるころには、地面にはありや虫たちの姿も現れる。
私たちは、青い星の茶色の地の上で生きている。多くの命と共に生きている。春の茶色は、命の喜びを静かに感じさせる色。