白いお部屋

シンプルに幸せを見出す人のお話。

もし人魚だったら、憧れたのはたぶん王子様じゃなくて地上の世界そのもの

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もし私が人魚だったら、憧れたのはたぶん王子様じゃなくて、海から眺めることしかできなかった地上という未知の世界そのものだろう。

 

海の中の写真を見て、そんな考えがふと頭をよぎった。

 

私の人魚の物語は、内面を中心にきっとこう紡がれる。

 

地上に上がった人魚の語り

 

私は海の中からやってきた。青の中から飛び出した。緑と茶色の世界に憧れたんだ。

 

水のなかゆったりとたゆたうことはできなくなったけど、肌に風を感じたり、地を踏みしめて駆けたりできるようになった。

 

海の中は、下へ深く深く広がって、だんだんと闇が濃くなっていく世界だった。すごいね、地上は海と反対だ。高く、上へ上へと世界は広がっていて、だんだん太陽の光に近づいていく。

 

水面を境に世界は対照的になっている。

 

新しい世界、知らない世界、価値観のまったく異なる世界。おもしろいね。あたりまえが、あたりまえじゃないと気が付く瞬間は。

 

うれしいね、違う世界に同じものを見つけた瞬間は。空を飛ぶ鳥の群れは、海を泳ぐイワシの大群と似ているね。雨の日の薄暗さも、親を呼ぶ子の鳴き声も、葉をすかす木漏れ日も。

 

新しい世界はたくさんのことが違ったけれど、それでも一緒だったのは、世界は美しいということ。

 

私はどちらも好きで、海の中に戻るのは嫌ではないけど、それでもきっとこれからも、新しいことを知るのをやめられないだろう。新しい世界のトキメキは、私に人生の大きな喜びを与えてくれるから。

 

大丈夫。懐かしい青の記憶は、ずっと私の中に息づいて、なくなることはないのだから。

 

ありがとう、愛おしい世界のすべてよ。