あらゆるデータを管理される社会とは。映画のような近未来都市はそう遠くない。
スマートシティという言葉を知っていますか。
IoTの先端技術によって、インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、人々の生活の質を高め、環境・経済の持続可能性と発展を目指す都市です。
スマートシティは世界中でプロジェクトが進められています。
街全体がインターネットにつながり、あらゆる情報がAIに管理された社会。街では自動運転の車やロボットが活発に駆動しており、すべてが効率化されています。そんなSF映画の空想都市のような世界が一般的になるのは遠い未来の話ではないでしょう。
そんな都市の実現には、大量のオープンデータの使用が欠かせません。あらゆるデータがあってこそ効率化を図れるからです。
スマートシティだけに限らず、これから先の世界はあらゆる行動データが共有され、それに基づいて私たち自身の生活が形成されていくでしょう。
今回は、ビッグデータとAIやIoTの技術が実際に使われている海外の事例を紹介します。近い未来をよりリアルに想像できるでしょう。
ノルウェーのスマートシティ
ノルウェーにある「Ålesund」という都市は、スマートシティの1つです。
ここでは都市全体を3Dモデル化し、多大なデータを使って「デジタルツイン」として様々なシミュレーションおこない、より暮らしやすい街づくりがなされています。
デジタルツインとは、実際の環境に関する情報をリアルタイムで収集しながら、仮想空間上に仮想モデルを構築してシミュレーションをおこなうことです。
Ålesundではデジタルツインを利用し、火事による被害を軽減することに成功しています。
雨や風、気温といった天候データに加え、各車の位置情報、保育園や学校の時間のリアルタイムなデータを活用することで、消防車が渋滞や登下校中の道を把握し、現場までより短時間で着けるようになりました。
デジタルツインでは、常にリアルタイムのデータを収集し続けることでシミレーションが可能になります。5Gによってデータの高速・大容量、多数同時接続、超低遅延・超高信頼性が保たれれば、デジタルツインの可能性はますます広がるでしょう。
中国の信用スコア制度
ここでは個人の行動データの話になります。
中国では、人々の社会的な信用度をスコアとして数値化するシステムが導入され始めています。スコアが高ければローン金利が下がったり病院で優待されるなどのメリットがある反面、信用度が低いと公共交通機関の利用に関してなどさまざまな制限があります。
低スコアによる制限に関していえば、航空券や長距離鉄道のチケットが買えなかったり、NPOなどの組織の立ち上げが禁止されたり、特定のデートサイトが利用できないといった事態が実際に起きています。
この信用スコアは、AIが個人の日々の行動を追跡して採点しています。金銭的な滞納がないかなどはもちろんですが、信用スコアの採点対象は実生活からネットにまで及びます。
例えば、AIによってインターネットでの購入履歴やSNSでの発言などが記録され、ビックデータとして保存されます。また、ゲームのやりすぎも信用スコアの低下につながります。
中国で人気のシューティングゲーム「カウンターストライク:グローバルオフェンシブ」は、ゲームのアカウント作成の際に、信用スコアを導入している芝麻信用のアカウントが必要となっています。
そのため、ゲームの使用データも信用スコアに関する情報として記録されるようです。
このように、あらゆる個人データが管理・使用されるシステムは、今後の発展と共に中国に限らず世界に広がっていく可能性が高いでしょう。
近未来都市のカタチ
今後、オープンデータの使用によってスマートシティが発展すれば、私たちの生活はより快適なものになっていくでしょう。
一方信用スコアのような個人データの収集は、人によっては生活を豊かにし、人によっては生活を不便にしてしまうかもしれません。
データが管理される社会を考えていて、あさのあつこの「NO.6」を思い出しました。環境やデータが管理される理想都市「NO.6」は、実は都市の存続を揺るがす危険因子は秘密裏に排除する闇が深い都市で…という背景の物語です。
もしデータ管理側が正しく運用しなければ、このストーリーのように少し怖いなと思いました。
しかし、あらゆるデータがオープンになるということは、嘘がつけなくなる社会だともいえるので、未来は明るいかもしれません。